COLERE JOURNAL(コレレジャーナル)

弁護士藤森純が運営するブログです。文化と法律の関わり方について考えていきたいです。

2016年6月の改正風営法施行までの流れ

《注》本記事についてはアップデート版があります。こちらをご覧ください(2016年3月5日追記)。

【この記事のポイント】

(1)2015年6月17日に改正風営法が成立し、同月24日に公布された。

(2)改正風営法が実際に施行されるのは、2016年6月の予定。

(3)2016年6月までに、政令、国家公安委員会規則、各都道府県の条例、風営法の解釈運用基準などで具体的な規制の中身が定められていく。

(4)警察庁との面談、内閣府の規制改革会議、都議会などへのアプローチを始め、ロビー活動は現在も継続中。

改正風営法が2015年6月17日に成立、同月24日に公布

久々の更新となりました。

2015年5月28日のエントリー以降、6月17日には、改正風営法が成立し、同月24日には同法が公布されました。

 

改正風営法のうち、ダンス教室、ダンスホールなど「設備を設けて客にダンスをさせる営業」(現行風営法2条1項4号)(いわゆる4号営業)に対する規制については、6月24日の公布と同時に施行がなされました。このため、ダンス教室、ダンスホールなどに対する風営法の規制は、すでに撤廃されることになりました。

社交ダンス業界の皆さんは、クラブに対する風営法の規制が問題視される以前から、風営法の規制を疑問視し、改正に向けて動いていました。今回の風営法改正も、社交ダンスの業界の皆さんの尽力あってこそ、実現できたものといえるでしょう。

一方、クラブなどに対する規制である「設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」(現行風営法2条1項3号)(いわゆる3号営業)については、2016年6月の改正風営法施行までは、現行法の規制が残ったままとなります。

 

では、なぜ改正風営法のうち4号営業に関する部分については、改正風営法の公布と同時に施行され、3号営業に関する部分については1年後の2016年6月の施行となるのでしょうか。

それは、4号営業に関しては、風営法による規制が完全になくなるだけで、新たな規制が設けられるわけではないため、公布と同時に施行することが可能であるのに対し、3号営業に関しては、3号営業の規制がなくなると共に、特定遊興飲食店営業という新たな営業形態に関する規定が設けられるため、政令などで具体的な要件などを定める必要があるからです。

以前のエントリーでもお伝えしたように、クラブや踊れるレストランのような営業は、風俗営業として規制されてきたのですが、今回の改正により、風俗営業からは外れます。

また、これまで、日本では、飲食店において、深夜に客に遊興させることは、許されていなかったのですが、「特定遊興飲食店営業」という新たな営業形態が認められることになり、飲食店で深夜に客に遊興させることが可能となりました。

この「特定遊興飲食店営業」は、風営法の中に規定があるのですが*1、具体的な許可取得要件に関しては、法律の中に定めがあるわけではなく、政令、国家公安委員会規則、各都道府県の条例、風営法の解釈運用基準などで定められることになります。

これらの政令などについては、改正風営法を元にして、2016年6月の改正風営法施行までに、定められることになるのです。

2016年8月現在は、風営法施行令*2(内閣が定める政令です)に特定遊興飲食店営業に関する規定を設けるために、警察庁を中心として動いている状況です。

2016年6月の施行までの流れ

ここで、6月24日に開催されたダンス文化推進議員連盟の総会における警察庁の発言を参考に、改正風営法成立から来年6月の改正風営法施行に向けたおおまかな流れを見てみましょう。これは、あくまで暫定的なものになる点については、あらかじめご了承ください。

2015年5月29日 改正風営法衆議院で可決
2015年6月17日 参議院でも可決→改正風営法成立
2015年6月24日 改正風営法公布(4号営業の規制削除に関連するものは即日施行)
2015年8月頃 政令に関してパブリックコメント予定
2015年9月頃 政令成立予定
2015年9月〜10月頃 風営法解釈運用基準見直し開始
2015年10月頃 各都道府県警察が条例案を作成
2015年12月頃 各都道府県で条例成立予定
2016年3月頃 特定遊興飲食店営業事前申請開始
2016年6月頃 改正風営法施行予定

本エントリー作成の時点で、政令に関するパブリックコメントについての告知などがなされていないことから、上記の予定は少しずつずれ込んでいくことになるものと思われます。

警察庁は、政令を制定するにあたって、本年7月に、今回の風営法のロビー活動に関わった各団体などに、アンケートを実施しました。

このアンケートの内容について、どのような形で公表されるかは不明ですが、私の方でも提供できる範囲で本ブログなどでご紹介できればと思っております。

また、以前のエントリーでも取り上げたとおり、特定遊興飲食店営業についての許可取得要件などの定め方によっては、規制強化になりかねないという問題点があり、これについて、問題意識を明らかにするために、本年8月5日に内閣府の規制改革会議のワーキング・グループが開催されました。これには、芸団協、音制連、ACPCといった音楽関係の団体も出席しました。このワーキング・グループの議事録*3については近日公開される予定です。規制改革会議の内容についても、適宜ブログで触れていければと考えております。

秋以降には、都道府県条例の制定の動きも始まりますので、こちらに関してもアプローチを開始して行っているところです。

なお、8月3日のDOMMUNEの「TALKING about 風営法!! 第7章」でも改正風営法の課題点などについて、お話させていただいております。いずれ、アーカイブ映像が公開されると思いますので、その際には、改めてお伝えいたします。

風営法が改正されたことで一段落と思いきや、アプローチしていかなければならないところが、これまで以上に増え、正直途方に暮れていますが、やるしかないですね。おかげさまで、その他の弁護士としての業務も忙しいため(現在、事務所の体制を強化中ですので、ご相談がある方はお気軽にご連絡ください)、本ブログの更新はどうしても遅れがちになってしまうのですが、できるかぎり皆さんに各種の情報を提供していけるようにできればと思っておりますので、引き続き宜しくお願いいたします。

 

*1:特定遊興飲食店営業は、風営法の中に規定がありますが、「風俗営業」ではありません

*2:風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律施行令

*3:各種資料や議事録については、こちらで公開されています