COLERE JOURNAL(コレレジャーナル)

弁護士藤森純が運営するブログです。文化と法律の関わり方について考えていきたいです。

2015年8月5日の規制改革会議地域活性化ワーキング・グループ

【この記事のポイント】

(1)2015年8月5日に内閣府の規制改革会議の地域活性化ワーキング・グループが開催。
(2)ACPC、芸団協、音制連などの音楽関係者の団体から、特定遊興遊興飲食店の問題点について指摘。
(3)「特定遊興飲食店営業」について風営法の趣旨に反しないものについては除外するべき。

ワーキング・グループでの特定遊興飲食店営業の問題意識についての共有

まず、2015年8月5日に開催された内閣府の規制改革会議の地域活性化ワーキング・グループについてご説明したいと思います。

 


同日のワーキング・グループの資料および議事録は、こちらで公開されておりますので、ご興味ある方はご覧ください。

規制改革会議とはどういうものなのかについて、簡単にご説明しましょう。下記に、内閣府のホームページに記載された説明を引用します。

「規制改革会議」は、内閣府設置法第37条第2項に基づき設置された審議会です。内閣総理大臣の諮問を受け、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制改革を進めるための調査審議を行い、内閣総理大臣へ意見を述べること等を主要な任務として、平成25年1月23日に設置されました。

少しかみくだいてご説明すると、規制改革会議は、企業の代表者や学者といった民間の有識者を集めて、日本の経済を発展させるうえで必要な規制改革を進めるための下調べを行う役割を担っています。

「日本には、こういう規制が存在するけど、この規制のせいで、こういうビジネスができなくなっているのは、もったいなくないですか。もう少し、規制を緩やかにした方が日本の経済も盛り上がると思いますよ」といったことを内閣総理大臣に助言する機関なのです。

まさに風営法のダンス営業規制も社会の実態に見合わない基準が定められたもので、これにより、健全な経済活動を行うことが難しくなっている実例の1つだと思いますので、規制改革会議が本件について興味を持ち、ワーキング・グループを開催しているのは自然な流れであるといえると思います。

 

そして、2014年の9月、10月にも風営法のダンス営業規制に関するワーキング・グループが開催され、ダンス営業規制に関する各種問題点が検討されました。
2015年の8月5日に行われたワーキング・グループでは、昨年の際には検討されなかった特定遊興飲食店営業の「遊興」という概念に基づく規制についての問題意識が確認されました。
特に、今回は、クラブ以外の業界の方に、「遊興」の定義の問題が、クラブにとどまらず、ライブハウスその他、多種多様な業態に影響しかねないことについて、ご発言いただきました。

これまでも、風営法改正のロビーに協力いただいていたACPC(一般社団法人コンサートプロモーターズ協会)や、今まで風営法改正のロビーに関わる機会があまりなかった芸団協(公益社団法人日本芸能実演家団体協議会)や音制連一般社団法人日本音楽制作者連盟)に積極的に発言いただいたことにより、「遊興」による規制の問題点が浮き彫りにされたといえるでしょう。

私も、今回のワーキング・グループに参加していたのですが、ACPC、芸団協、音制連の皆さんに話したいことをほぼほぼ話していただいたので、特に発言することなく、ワーキング・グループを終えました。

今回のワーキング・グループは、当初、1回で終わりになる予定だったのですが、問題点の大きさについて認識いただいた安念座長から、2回目も開催するということが確認されました。

次回は2015年10月開催に向け、日程等を調整中です。

「特定遊興飲食店営業」から除外すべきものとは?

「遊興」の定義についての問題意識について、共有されることになりましたが、それでは、どうやって、問題を取り除くのか。それについて、少し考えてみたいと思います。

あくまで、素案となりますが、「特定遊興飲食店営業」の除外要件案として、次のようなことを考えています。

「特定遊興飲食店営業」とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むもの限る。)で、午前六時後翌日の午前零時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)をいう(新風営法2条11項)。

とされています。

このうち、下記に該当するものについては「特定遊興飲食店営業」から除くべきであると考えます。

(1)客室が1室のみの営業所で、かつ、客室の面積が33平方メートル未満であるもの。
(2)営業所内の照度が常態として40ルクスを超える状態で営まれるもの。
(3)深夜における営業が1ヶ月につき4日以下であるもの。
(4)客が遊興および飲食を行うにあたって、常に着席した状態でこれを行うもの。

なぜ、(1)から(4)の場合について、特定遊興飲食店営業から除外すべきと考えるのかについて、簡単にご説明したいと思います。

 

(1)については、 個室が設けられているわけではないので、善良の風俗や清浄な風俗環境を害するような状況が生じる可能性は低いです。大人数が集まる場所ではないため、騒音・振動等の近隣への迷惑な状況も生じにくいと考えられます。
(想定具体例)DJバー、ライブハウス等

 

(2)については、 深夜飲食店営業の照度の規制基準値である20ルクスの2倍以上の照度を有しており、善良の風俗や清浄な風俗環境を害するような状況が生じる可能性は低いと考えられます。
(想定具体例)落語、漫才等の演芸を行う店舗等

 

(3)については、 非常態的に行われる年数回のイベントや飲食店が週末の1日のみ客に遊興を行わせるような場合には、特定遊興飲食店営業としての営業性が認められないものと考えられます。恒常的に深夜遊興が行われるわけではないため、善良の風俗や清浄な風俗環境を害するような状況が生じる可能性は低く、かつ、近隣への影響も少ないと考えられます。
(想定具体例)フジロックフェスティバルのような夏フェス等

 

(4)については、 客が着席した状態で、遊興や飲食を楽しむ場合には、善良の風俗や清浄な風俗環境を害するような状況が生じる可能性は低いです。客は遊興を楽しむ際に移動したり、踊ったりするわけではないため、騒音・振動等の近隣への迷惑な状況も生じにくいと考えられます。
(想定具体例)レストランでの生演奏、映画上映等

 

このような形で、除外される場合を設けることにより、風営法の趣旨に反しないような営業形態について、特定遊興飲食店営業としての規制がおよばないようにする必要があると思っています。