COLERE JOURNAL(コレレジャーナル)

弁護士藤森純が運営するブログです。文化と法律の関わり方について考えていきたいです。

【警察庁パブコメ】特定遊興飲食店営業の営業時間の制限や騒音・振動の基準はどうなるの?|改正風営法

【この記事のポイント】

(1)特定遊興飲食店営業は、原則24時間営業可。ただし、午前5時から午前10時までの時間については、営業をしてはならない時間を条例で定めることが可能。
(2)特定遊興飲食店営業の「騒音」、「振動」の規制に関する条例の基準は、現行風営法の3号営業と変わらない。

「営業時間」の制限について

前回からまた更新が空いてしまいましたが(汗)、今回も警察庁が示した政令等に関する考え方について解説していきたいと思います。

 

今回は、営業時間の制限騒音・振動の基準について、触れていきたいと思います。

特定遊興飲食店営業は、深夜(午前0時から午前6時まで)に、お酒を提供しつつ、客に遊興をさせる営業ですが、深夜以外の時間帯においても、営業することが可能です(つまり、24時間営業も可)。

ただ、朝の時間帯に特定遊興飲食店営業が行われ、そこで遊んで興奮している酔ったお客さんが店の外に出てきた時間が、通勤、通学の時間と重なっていた場合、ちょっと問題がありそうですよね。例えば、酔っ払ったお客さんが路上で寝ている横を、子どもたちが通学しているなんていう光景は、子供の親からみたらあまり歓迎できない状況だと思います。このような状況を作らないようにするため、警察庁の政令案では、特定遊興飲食店営業の営業時間について、午前5時から午前10時までの間であれば、条例で制限できるということが定められています。

逆を言えば、営業時間を制限できるのは、午前5時から午前10時までの間なので、例えば、「午前1時から午前4時の営業を制限する」というようなことを条例で定めることはできません。

また、営業時間の制限ができるのは、「早朝における風俗環境の保全につき特に配慮を必要とする地域内の地域」についてのみという限定が設けられており、営業時間の制限がむやみやたらに行われないようにするための配慮がなされています。

近隣の住民が平穏に朝の通勤、通学の時間帯を迎えたいという要請と、特定遊興飲食店営業を営業したいという要請とのバランスを図るうえでは、このような営業時間の制限は、やむを得ないものといえると思います。

「騒音」、「振動」の基準

特定遊興飲食店営業は、政令で定める基準に基づいて条例で定める数値以上の騒音や振動が生じないような形で営業しなければなりません。

深夜における「騒音」の数値は、以下の数値を超えない範囲で条例で定めることになります。

(ア)住居集合地域その他の地域で、良好な風俗環境を保全するため、特に静穏を保持する必要があるものとして都道府県の条例で定める地域 45デシベル
(イ)商店の集合している地域その他の地域で、当該地域における風俗環境を悪化させないため、著しい騒音の発生を防止する必要があるものとして都道府県の条例で定める地域 55デシベル
(ウ)その他の地域 50デシベル

深夜における「振動」の数値は、55デシベルを超えない範囲で条例で定めることになります。

これらの深夜における騒音、振動の基準となる数値については、現行風営法と同じです。

なお、環境基本法で定められている、相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域における夜間(午後10時から翌午前6時まで)の騒音の基準は50デシベル以下とされています。

ここで、環境省が発表している「生活騒音の現状と今後の課題」という資料の中から、下記にいくつかの具体例をあげておきますので、生活騒音がどれくらいのデシベルなのかのイメージを持っていただければと思います。この「生活騒音の現状と今後の課題」という資料、昭和58年9月(32年前!)のものなんですね。それが、未だに環境省のホームページの資料として掲載されているって面白いですよね。もっと、新しい資料はないのでしょうか。。。

エアコン 約41~59デシベル

換気扇 約42~58デシベル

人の話し声(日常) 約50~61デシベル

子供のかけ足 約50~66デシベル

ふとんをたたく音 約65~70デシベル

洗濯機 約64~72デシベル

電話のベル音 約64~70デシベル

テレビ 約57~72デシベル

ピアノ 約80~90デシベル

人の話し声(大声)  約88~99デシベル

犬の鳴き声 約90~100デシベル

 個人的には、大音量で音楽を楽しむことが好きですが、それが周りの人にとっては不快な騒音、振動となることももちろん理解できます。

このため、大音量での音楽を楽しめる場所を営業する事業者の方には、防音設備などをきちんと備えて営業していただくのが良いと思っていますし、今回示された警察庁の騒音、振動に関する政令案も規制としてやむを得ないものであると考えています。*1

今回はここまで。次回のエントリーでは照度の測定方法、客室一室の面積について見ていきたいと思います。

*1:もちろん、騒音、振動の計測方法などの具体的な運用については、過度な規制にならないように注視する必要があると思いますが。