COLERE JOURNAL(コレレジャーナル)

弁護士藤森純が運営するブログです。文化と法律の関わり方について考えていきたいです。

ソニーミュージック音源をDJミックス、リミックス作品に使用する場合の権利処理が簡単になる?

サンフランシスコにあるDubset Media(以下、「Dubset」)が、Sony Music Entertainment(以下、「Sony Music」)と契約したことが発表されました。

Dubsetが展開するMixBANKは、DJミックスや楽曲のリミックス作品について、DJと権利者の双方にロイヤリティを支払う仕組みを提供するサービスです。今回、Sony Musicはメジャーレーベルとして初めてMixBANKを利用する契約を締結したとのことです。

MixBANKでは、DJミックスやリミックス作品の中にサンプリングされている元の音源が何であるかを特定し、数分のうちに元の楽曲・音源の権利者との権利処理を一斉に行うことができるようです。そして、DJミックス、リミックス作品の利用により得られたロイヤリティが、元の楽曲・音源の権利者とDJミックス、リミックス作品を作ったDJの双方に分配されるようになっています(下記の図参照)。

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※MIxBANKによるロイヤリティの分配の流れ(Dubsetのホームページより引用)

 

DJは、MixBANKを使えば、[1]使われた楽曲・音源の権利者との間の権利処理ができるうえに、[2]自身が作成したDJミックスやリミックス作品のロイヤリティを受け取ることもできることになります。

具体的な流れとしては、次のような形になります。

(1)DJが自身の作成したDJミックスやリミックス作品をMixBANKにアップロード。

   ↓

(2)MixBANKが使われている元の楽曲・音源を分析し、権利者を特定。

   ↓

(3)権利者の楽曲・音源の使用、流通のルールにしたがって権利処理。

   ↓

(4)DJミックスやリミックス作品がSpotifyやApple Musicなどを通じて流通。

   ↓

(5)ユーザーがDJミックスやリミックス作品を再生。

   ↓

(6)得られた収益からロイヤリティがDJと権利者に分配。

 

今回、DubsetとSony Musicが契約したことで、膨大な量を誇るSony Musicのレーベル音源についても容易に権利処理ができることになるようです。

日本では、「楽曲」の権利処理については、JASRACの登録楽曲であれば定められた使用料を支払うことにより比較的容易に権利処理をすることができます。

ところが、「音源」の権利処理については、音源の原盤権を保有しているレコード会社との間で個別に利用許諾を受ける必要があります。しかも、JASRACのように使用料の規程が定められているわけではないので、使用料の額自体も交渉しなければなりません。このような点から、レコードをサンプリングして自分の音源に使ったり、自分のDJミックスに入れたりするための権利処理は容易ではありません。

今回のMixBANKへのSony Musicの参入は、複雑な権利処理を容易にするための解決方法の1つとして期待していいのではないかと思っています。MixBANKが早く日本でのサービスも展開してくれるといいですよね。今後、このサービスを利用することでまた面白いDJミックスやリミックス作品が生まれてくることを楽しみにしています。

 

[関連]

・Dubsetのプレスリリースはこちら

・TechCrunchの記事はこちら