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COLERE JOURNAL

コレレジャーナル。文化と法律の関わり方について考えるブログです。

はじめに

風営法改正

本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

私は、文化・芸術と法律との関わり方について考えるひとつの場所として、本ブログを記しています。

近年、法律が文化の発展を阻害するボトルネックとなっている事象が多く見受けられます。私は弁護士の立場から、法律というルールをどのように定め、どのように運用していけば、ボトルネックを解消させることができるのかについて関心があります。ボトルネックを解消させる取り組みの一環として、数年前から風営法改正のロビー活動にも携わって参りました(私は主に、DJやアーティストで構成する「クラブとクラブカルチャーを守る会」(略称CCCC)の一員(2016年6月現在は事務局長)としての立場で関与しています)。

本ブログでは風営法に関して下記のようないくつかのエントリーを行っています。ご覧いただければ幸いです。

2015年6月17日に改正風営法が成立し、同月24日に公布されました。改正風営法の施行は2016年6月23日に施行されました(なお、改正法の一部は公布と同時に施行されています)。

風営法は改正されたものの、各法令について、問題点や課題点はまだまだあります。また、今回の改正の理念や趣旨に反するような現場での運用が行われないように注視していく必要がありますし、多くの人々で情報共有して、より良い形を模索していく必要があります。今後の動きなどについても、お伝えしていければと思っております。

(2016年6月25日 追記)

 

風営法改正に関する記事【目次】

風営法の問題点

何で今、風営法の改正が問題になっているの?いつ改正されるの? - COLERE JOURNAL

風営法改正案でのクラブ営業の位置づけ

風営法の改正案でクラブ営業の位置づけはどうなるの? - COLERE JOURNAL

▼面積要件について

新風営法ではクラブの客室1室の床面積の要件はどうなるの? - COLERE JOURNAL

▼立地規制に関して

クラブの営業地域の制限って何?(1) - COLERE JOURNAL

クラブの営業地域の制限って何?(2) - COLERE JOURNAL

クラブの営業地域の制限って何?(3) - COLERE JOURNAL

特定遊興飲食店営業の立地要件(地域規制)に関して - COLERE JOURNAL

▼特定遊興飲食店営業の検討課題

特定遊興飲食店営業の検討課題は? - COLERE JOURNAL

▼改正風営法施行までの流れ

【2016年3月版】2016年6月の改正風営法施行までの流れ - COLERE JOURNAL

2015年8月5日の規制改革会議地域活性化ワーキング・グループ - COLERE JOURNAL

 ▼警察庁パブリックコメント

【警察庁パブコメ】特定遊興飲食店営業の立地規制はどうなるの?|改正風営法 - COLERE JOURNAL

【警察庁パブコメ】特定遊興飲食店営業の営業時間の制限や騒音・振動の基準はどうなるの?|改正風営法 - COLERE JOURNAL

【警察庁パブコメ】特定遊興飲食店営業の照度の測定方法や面積の基準はどうなるの?|改正風営法 - COLERE JOURNAL

【警察庁パブコメ】「特定遊興飲食店営業」の定義はどうなるの?|改正風営法 - COLERE JOURNAL

▼警視庁の条例案

【警視庁】特定遊興飲食店営業の営業所設置許容地域の具体案が提示されました。|改正風営法 - COLERE JOURNAL

▼11/5 ダンス文化推進議員連盟開催

11/5 ダンス文化推進議員連盟開催 - COLERE JOURNAL

▼11/13 改正風営法の下位法令の等の公布、警察庁パブリックコメント募集結果公表

11/13 改正風営法に関する下位法令等が公布されました。 - COLERE JOURNAL

▼ライブハウス関連

風営法改正によってライブハウスが風俗営業になるというのは本当か?(1) - COLERE JOURNAL

風営法改正によってライブハウスが風俗営業になるというのは本当か?(2) - COLERE JOURNAL

※ また、自分も参加している「クラブとクラブカルチャーを守る会」についての記事がQeticさんに掲載されております。こちらも合わせてご覧ください。

風営法改正で何が変わるの?C4がしてきたPLAYCOOLなこと | Qetic

1956年|太陽族映画上映反対運動から新映倫発足へ(2)

映倫

映倫の組織変更の動き

前回のエントリーで太陽族映画上映反対運動が新映倫発足のきっかけのひとつになったことを書きましたが、実は映倫の組織編成を変えようという動き自体は、太陽族映画上映反対運動が起きる前からありました。

当時、映倫の職員であった遠藤龍雄著『映倫・歴史と事件』ぺりかん社・1973年)から引用してみましょう。

映倫改組の問題は、実を言うと、その前の春からの懸念であり、池田義信氏が中心となって、五社*1は勿論、すでに審査参加の欧州系外国映画業者、さらには未加入の米国メジャー(大手)系十社の参加を構想とした私案が作られており、米国映画輸出協会(MPEA)と、大沢善夫氏(大沢商会)を通じて、折衝に入っていたのであった。

その頃、米国メジャー系10社の映画については、映倫の審査が行われていませんでした。これは、米国メジャー系10社については、米国での独自の審査に通過している以上、日本において重ねて審査を行う必要はないという米国側の言い分に基づくものでした。また、米国側としては、日本の映画会社が作った機関に審査を任せると不利益な判定を受けるという危惧もあったとされています。

ところが、米国側も歩み寄りを見せはじめ*2、審査項目をかなり限定したものの、日本での審査に同意する方向で話が進んで行きます。そういった状況の中で、結果的に映倫改組の動きを加速させる事態として太陽族映画上映反対運動が起こったのでした。

『処刑の部屋」公開前日の朝日新聞による公開質問状

また、太陽族映画上映反対運動を活発化させるのに一役買ってしまったのが、映画『処刑の部屋』公開前日である1956(昭和31)年6月27日の朝日新聞の夕刊に掲載された井沢淳の記事でした。「犯罪を真似させる危険 上映するならカットせよ」という見出しが付いたその記事は、『処刑の部屋』を製作した大映の永田社長に宛てた公開質問状という形式をとっています。その内容を以下に引用しながら見てみることにしましょう。

ただいま『処刑の部屋』を見ましたが、見終わってどうにも後味が悪く、やり切れない思いでした。同じ石原慎太郎原作でも『太陽の季節』は演出が稚拙なので、まだ少しは愛敬がありましたが、今度のはなまじ市川崑演出が技術的にうまく、迫力もあるので、余計いやな感じが出ていると思います。こういうテーマの場合、技術は凶器だとも言えます。

同じく石原慎太郎原作の『太陽の季節』を引き合いに出しながら、『処刑の部屋』について、市川崑監督の演出の技術ゆえに、「後味が悪く、やり切れない」、「余計いやな感じが出ている」という印象を持ったことが語られます。井沢はこのような印象を持った映画に対して、永田社長に向けて、次のような提言を行います。

特に主人公(川口浩)が睡眠薬で女子大生(若尾文子)を睡らせて犯すところは、全く有害です。これは明らかに犯罪であり、その犯罪を青少年たちにまねさせる危険が多分にあります。この映画の上映を中止していただきたとも思いますが、それが無理なら、せめて、この辺の部分を切っていただきたい。

この文章を見る限りにおいては、井沢は、睡眠薬で女性を眠らせて犯すという犯罪行為が描かれている部分を問題視して、映画の上映中止または、該当部分の切除を求めています。映画という表現の一部に犯罪行為が描かれていることを理由に、映画自体の上映中止を求めるというのは、かなり乱暴な主張だと思います。そのような主張が『処刑の部屋』の公開前日に朝日新聞の夕刊上で展開されたというのは、当時の新聞の影響力を考えれば、かなりの反響を呼んだものと推察されます。皮肉なもので、このような記事が出ることによって、人々の注目をより集めることとなり、公開された映画はヒットを収めることとなります*3

と、同時に、太陽族映画の倫理観に反感を持つ層に対しても、当該記事は大きな影響を与えることになり、太陽族映画の上映反対運動はより活発となっていきます。そして、前回のエントリーでも採り上げたように国会でも太陽族映画に関して議論がなされ、映画の内容の審査について映倫による自主規制に任せるのではなく、何らかの法的な規制が必要なのではないかという話の流れが作られていくことになります。

井沢の公開質問状は次のように続きます。

大映の企業審議会では、あなただけが最後までこの企画に反対されたと聞いています。正にその通りだと思います。ディズニーのすぐれたマンガ映画などを輸入して日本の少年たちを教化しておられるあなたとしては、『処刑の部屋』は当然、作りたくないものだったと信じます。その気持を、もう少し企画審議会でも主張していただけたら・・・・とも思いました。

主人公をふくめた青年たちの生き方はまるで無茶です。ただ力だけがすべてを解決するという考えも、危険なものを持っています。日活が『太陽の季節』でヒットしたからとて、大映がその後をまねることもありますまい。

このうえは、せめて興行において、青少年に見せないように良心的にやってほしいと思います。どぎつい宣伝などをしないように、注意していただくことを望むばかりです。グランプリ・大映の名誉のためにも。

どういう趣旨で書いているのかがよくわからないのですが、「ディズニーのすぐれたマンガ映画などを輸入して日本の少年たちを教化しておられるあなた」という書きぶりについては、違和感を感じざるを得ません。大映がディズニーの映画を輸入していたとして、それが日本の少年を何らかの形で「教化」することを主眼として行われているとは考えにくいです。基本的には、興行、娯楽という側面から映画のラインナップを充実させるためにディズニーのカタログを輸入していたと考える方が素直だと思います。仮に永田社長が企画審議会で『処刑の部屋』の製作に反対していたという事実があったとしても、そのこととディズニー映画の輸入との関連性がどこにあるのか全く不明です。

井沢は、大映に対して、『処刑の部屋』について「どぎつい宣伝などをしないように、注意していただくことを望むばかりです」と述べていますが、大映は、この記事を逆手にとって、「犯罪を真似させる危険 上映するならカットせよ」という見出しを『処刑の部屋』の新聞広告などのキャッチコピーとして使っていったようです。

このように井沢の記事は、結果的に、逆説的な『処刑の部屋』の宣伝効果とともに、太陽族映画上映反対運動の活発化という2つの役割を果たすことになりました。井沢本人は、キネマ旬報1956年8月下旬号(キネマ旬報社「映画批評について」と題する市川崑との対談記事の中で、朝日新聞の記事の趣旨が間違った形で伝わってしまったことを嘆いているかのような発言をしていますが、前述の朝日新聞の記事の本意がどこにあったのかについては、発言が観念的すぎてよくわかりませんでした。市川崑との対話もあまり噛み合っておらず、わかりづらいことこのうえない対談ではありました。もっとも、最近の対談記事ではなかなか見かけないような、真っ向から対立した意見を述べ合い、鈍器で殴りあっているかのような言葉の応酬にはなかなか興味が惹かれるものがあります。

1956年当時、映画がメディアとして世間一般に与える影響力が非常に大きかったことはわかるものの、なぜ、小説では許される表現が、映画になった場合に、上映中止やカットを求められるのかについて、朝日新聞の井沢の記事では、合理的な説明はされていません。

井沢は、キネマ旬報での市川崑との対談の中でも、

「あの映画はあきらかに犯罪描写だし、それをああいう露骨な表現で描いていくということが、小説ならまだ良いけれども、御承知のごとく時間の芸術であるから困る」

と発言していますが、なぜ、小説なら良いが映画ならダメなのかが語られないままです。

市川崑は、先の朝日新聞の井沢の文章に対して、道徳批評であると断じたうえで、

「映画というものは、そういう、つまり道徳批評とか、そういったものは(これは「処刑の部屋」の場合をいうのだが)そういう観点からばかり批評しないで、映画として見てもらいたいということを再三いうわけです。殊にあの批評文の中に「技術は凶器だ」という言葉があったが、ああいうことは断固として僕は排撃する」

と述べています。

映画における表現を道徳的観点からのみで捉えてしまう批評は、井沢の記事のように、なぜ映画だとダメなのかという部分を明らかにしないままに、倫理的によろしくないという理由で表現を制限していこうという流れを導いていきます。

このように井沢の記事自体は、表現への規制を加速させるために書かれたものと理解ができそうに読めますが、先述の通り、井沢の真意としては、違ったところにあったようです。井沢は、キネマ旬報市川崑との対談の中で、

「今度のきみの作品が動機となって、僕らが一番恐れている映倫破壊という先鞭になったらどうする」

といった発言をしています。井沢としては、映倫の審査を通過した『処刑の部屋』を観たら、映倫の審査を通過したとは思えないような不適切なシーンがあり、このような映画を上映中止やカットをするなどといった自主規制を行わなければ、映倫の審査による映画業界の自主規制というシステムが壊れ、国による法的規制がなされかねないという危惧から、前述の朝日新聞の記事を書いたということになるようなのです。

しかしながら、朝日新聞の記事からは、井沢がそのような視点を持って書いているとは到底読めません。井沢も市川崑との対談の中で新聞というメディアの文字制限による限界を主張していますが、それは言い訳にしか聞こえません。井沢の意図がどこにあったにせよ、結果的に当該記事が、『処刑の部屋』を観ていない層にも、内容的に問題のある映画であるという認識を植え付けることになり、映画に対する法的な表現規制の必要性が叫ばれる原因のひとつになったことは否めません。

1956年といえば、敗戦から10年を過ぎたものの、戦中やGHQの占領期における「検閲」の記憶はまだ新しかったはずです。そんな時期に、表現について何らか法的規制をすべきだという議論が全国的に巻き起こったということは、「表現の自由」というものがすぐに瓦解しかねないデリケートなものなのだということを思い知らされます。

法的規制と自主規制のいずれが良いのかという点については、単純に語ることのできない大きな問題ではありますが、1956年、映画界は、映倫の組織体制を一新し、自主規制の機能を強化させるという方法により、映画の内容に対する何らかの法的規制が及ぶことを回避することを選びました。

(文中敬称略)

*1:筆者注:「五社」とは、日本の大手映画会社5社を指します。「五社」がどこを指すかについては時代によって若干異なり、「松竹、東宝大映、新東宝東映」を指す場合と「松竹、東宝大映東映、日活」を指す場合があります。もともと、日本の大手映画会社を「五社」とくくって呼ぶのは、1953年に松竹、東宝大映、新東宝東映五社協定を結んだことに端を発します。1958年には五社協定に日活が参加して六社協定となりましたが、1961年には新東宝が経営破綻したため、五社協定に戻っています。このような経緯があるため、時期によって指している「五社」が違う場合があるのです。

*2:なぜ歩み寄りを見せたのかについては、筆者が不勉強にしてまだ不明なので、引き続き調べたいと思います。

*3:映画がヒットしたことから、井沢による記事は映画の話題作りのための宣伝記事だったのではないかと言われたこともあったようです。

1956年|太陽族映画上映反対運動から新映倫発足へ(1)

映倫

ここ最近のエントリーでは、表現・文化に関しての事件を年表にまとめていっています。これは、改正風営法の規制のあり方について思考を巡らせたり、自分が普段の業務の中で接している芸術、文化に関する様々な問題、著作権のあり方に関する問題などを解決したりするにあたって、これまでの歴史の中で積み上げられてきた表現・文化に関する様々な事件の流れを改めて知ることの必要性を痛感しているためです。マイペースな更新にはなってしまうと思いますが、続けていこうと思っていますので、お付き合いください。

単に年表だけを書いていくだけでは淋しいですので、年表の中でも面白い事項については、別途エントリーを残していこうと思っています。散文的かつ五月雨式のエントリー更新になってしまうかもしれませんが、こちらについてもお付き合いいただけると嬉しいです。

今回は、1956年(昭和31年)のお話です。

映画『太陽の季節』(古川卓巳監督)の公開

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1956(昭和31)年5月17日、日活映画太陽の季節(古川卓巳監督)が公開されました。原作は、石原慎太郎の同名小説です*1。 同小説については、第1回文學界新人賞と第34回芥川賞を受賞していますが、内容が当時の社会倫理に反しているとして、選考にあたって賛否両論があり、物議をかもしました。

太陽の季節』の映画化にあたっては、映倫が同映画の脚本を審査しました。映倫は、2点ほど演出上の注意を行いましたが、それ以外については、特に問題がないと判断しました。

そして、映画『太陽の季節』は、同小説が芥川賞を受賞してから半年も経たない5月17日に公開され、大ヒットを記録します。

ところが、その映画の反倫理的な内容について、教育団体やPTAの反発を招き、各地に上映反対運動が巻き起こっていきます。

映画『処刑の部屋』(市川崑監督)の公開

処刑の部屋 [DVD]

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そのような状況の中、同じく石原慎太郎原作の小説『処刑の部屋』市川崑監督の手により映画化され、6月28日に公開されることになります。『処刑の部屋』のあらすじを『ぴあシネマクラブ日本映画編2005-2006年版』から引用してみましょう。

「ある夜、大学生の島田と友人は、二人連れの女子学生と飲み歩いたが、島田は女子学生・顕子に薬を飲ませ友人のアパートに連れ込み、犯してしまう。その後、島田は金が元で他の大学の連中にリンチを受ける。そこに顕子が現れ島田は恐怖する。顕子の手にはナイフがあった・・・・。」

『処刑の部屋』では、主人公である島田克己(川口浩)が睡眠薬入りのビールを女子大生の青地顕子(若尾文子)に飲ませて強姦するというシーンがあり、これが青少年に悪影響を及ぼす可能性があるとして問題視されました。

例えば、地域婦人団体連合会(地婦連)は、映画『処刑の部屋』の公開翌日である6月29日に、日本興業組合連合会に対して、映画『処刑の部屋』の未成年者の入場制限の厳守を要望するとともに、映倫に対して、成人向指定の審査機関の改革を要望しています。

また、実際に当時、映画の『処刑の部屋』に影響されて少年が犯罪を犯したという事例が報告されています。少年犯罪データベース*2から引用してみましょう。

昭和31年(1956).7.28〔中3が映画をマネて睡眠薬混入〕

埼玉県熊谷市で、中学3年生(15)が隣家の米人宅に忍び込み、砂糖壺に睡眠薬を入れ、コーヒーにこの砂糖を入れて飲んだ主婦(23)が昏睡状態となった。石原慎太郎・原作、市川崑・監督の太陽族映画『処刑の部屋』を観て、主人公が女を薬で眠らせて犯すシーンをマネたもの。

昭和31年(1956).8.10〔19歳ニートら5人が監禁レイプ〕

東京都杉並区のアジトに、7.13にウェイトレス(21)を連れ込み、レイプしようとして翌日まで監禁した、無職(19)、中大3年生(20)、日大2年生(21)、明大4年生(21)、無職(20)の5人がこの日に逮捕された。会社重役、省庁の部課長、大学参事など裕福な家の息子で、小金井一家傘下の愚連隊の一員。  石原慎太郎・原作、市川崑・監督の太陽族映画『処刑の部屋』を観て、主人公が女を薬で眠らせて犯すシーンに刺激を受けたもの。

映倫事務局長が参考人として国会に呼ばれる。

その後、太陽族映画への上映反対運動は激化し、国会でも議論が行われることになっていきます。9月11日には、衆議院法務委員会閉会中審査小委員会に、映倫の事務局長池田義信が参考人として呼ばれました。

まず、三田村武夫衆議院議員からは次のような発言がなされました。

「近ごろいわゆる太陽族映画なるものがだいぶ問題になって参りまして映倫の機能云々という問題も世上論議の対象になってきたようであります。(中略)青少年不良化の原因、条件と申しますか、その社会的条件を正すことが根本の問題でありまして、すでに不良化してしまった者、凶器を持って町にあふれている者をただ警察の手で手当するというだけでは問題が片づかないのであります。(中略)その中でいつも大きく浮んでくるものは映画であります。映画というものが社会的に及ぼす影響はきわめて大きい、これは私が申し上げるまでもなく何人も肯定するところで与える影響というものはきわめて重要であります。そういう観点から、近ごろいわゆる太陽族映画なるものが問題になってきたことは申し上げるまでもありません。」

この発言からは、青少年犯罪の増加に対して、映画が大きく影響していると捉えていることがわかります。小説『太陽の季節』は、文学賞の受賞にあたって物議をかもしたことはあったものの、国会において審議されるほどではありませんでした。ところが、映画版については、国会で議論を呼ぶほどの影響力を持っていたということになります。1950年代は、日本映画の第2の黄金期であり、1956年の映画館の観客動員数は9億9378万人*3。2015年の映画館の観客動員数が1億6663万人であることからすると、メディアとしての映画の影響力の大きさは、現代に比べてはるかに大きいものであったことが窺われます。

そして、三田村議員は、こう続けます。

「ここに根本的問題にわれわれはぶつかるのであります。いわゆる新憲法下における自由なる社会においては、できるだけ強制的手段を用いたくない、つまり立法的処置とか権力による手当というものはできるだけ避けなければならぬ、これは言うまでもないのであります。そこに映画製作に対しても政府の意向とかあるいはまた権力的干渉というものがあくまでも排除されていることは御承知の通りであります。しかしながら、映画は企業である限り企業には営利が伴います。営利が伴う企業なるがゆえにまたその企業が自由であるということも少しどうかと思われるのであります。そのために映倫なるものができまして、自主的に調整と申しますか、そこに自粛の道が開かれている、かようにわれわれは伺っておるのであります。ところが、こういう自主的な映倫という機構があるにもかかわらず、次々とああいう太陽族映画が出て参ります。」

1947(昭和22)年5月3日に日本国憲法が施行されてから11年。あからさまに検閲制度を復活させることができないことは認識しつつも、自主規制がうまく機能しないのであれば、何らかの手立てを取らなければならないと考えている様子が三田村議員の発言からは窺われます。

「映画業者の自由企業はあくまでも認めます。同時に企業なるがゆえに営利もわれわれは尊重いたしますが、それゆえに企業と営利があくまでも野放しで自由であって、社会的な悪を好ましくないところに巻き散らすならば、別なことを考えざるを得ない。みずから求めて立法的処置を誘導するというような結果になることをわれわれはおそれるのであります。映画の倫理化と申しますか、倫理的な措置、そういったことが参考人の今までの御経験の上から、今までおやりになってきたこととあわせて可能か不可能か、そういうことによっていわゆる太陽族映画というものの手当が可能か不可能かということを私は伺いたいと思います。」

これに対して、池田参考人は、映倫のこれまでの活動などを述べたうえで、次のように発言します。

太陽族と申します一連の映画は、当然青少年の観覧は望みたくない映画としてわれわれはこれをはっきり公示をしたのであります。また映画館の中におきましてもこれを大きく取り上げて、そうして表示されているのでありますが、たまたまそれが十八才以下の子供たちが見ているではないかという現状、それから映画館が断わらないではないかという現状、こういう現状によって大きく問題が展開され、むしろ青少年問題対策よりも映画倫理対策というような方へ大きく波が押し寄せて参ったのであります。」

池田参考人が言うように、映倫は、『太陽の季節』を始めとする一連の映画に対して、脚本審査等で演出上の注意を行うなどし、成人向映画とするよう指導していたにもかかわらず、現実的に未成年者が観覧する状況が社会問題として取り上げられることを受けて、苦しい立場であることを吐露しています。

このように何らかの法的規制の必要性がなされる可能性が出てきたことに危機感を感じた映画業界は、映倫を新たな組織体制とすることを決め、1956年12月1日に映画倫理委員会(新映倫)を発足させることになりました。

(文中敬称略)

*1:小説『太陽の季節』は1955年(昭和30)年に文芸雑誌『文學界』7月号で発表

*2:2016年に出た、同データベース主宰の管賀江留郎著『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか 冤罪、虐殺、正しい心』は精緻な資料分析に基づく非常に面白いノンフィクションです。オススメ。

道徳感情はなぜ人を誤らせるのか ~冤罪、虐殺、正しい心

道徳感情はなぜ人を誤らせるのか ~冤罪、虐殺、正しい心

*3:2年後の1958年の観客動員数は11億2745万人。この1958年をピークに映画館の観客動員数は減少の一途を辿っていくことになります。

「表現・文化」事件年表[昭和20年代編]

年表

表現や文化に対する規制を始めとする各種事件についての年表を記載していきます。本記事は、予告なく随時更新していく予定ですので、ご了承ください。

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風営法改正によってライブハウスが風俗営業になるというのは本当か?(2)

風営法改正

前回のエントリーから、かなり時間が空いてしまい失礼いたしました。前回のエントリーでは改正前風営法(ここでは平成28年6月23日の施行以前の風営法のことを「改正前風営法」、施行後の現行風営法のことを「改正後風営法」と呼ぶことにします)において、ライブハウスが、いわゆる3号営業にあたる可能性があったというお話をしました。

今回は、改正後風営法で、ライブハウス営業は、どのように整理されるのかということを簡単に検討してみたいと思います。

客にダンスをさせる営業に係る規制の見直しイメージ

まずは、以下のチャート表をご覧ください。こちらは警察庁が風営法改正にあたって作成している「客にダンスをさせる営業に係る規制の見直しイメージ」になります。

f:id:COLERE:20160621130554p:plain

左側が改正前の分類で、右側が改正後の分類になります。
改正前には、いわゆるナイトクラブは、3号営業(ダンス+飲食)に分類されていました。ライブハウスに関しては、「ダンス」の定義についてどう解釈するかによって、3号営業に分類されてしまう可能性があったということは前回のエントリーで触れたとおりです。

では、改正後の分類について見た場合、ライブハウスはどこに位置付けられるのでしょうか。

改正後の分類について、整理してみましょう。チャート表の右側に掲げられている業態について見ていきたいと思います。

(1)新1号営業(改正後風営法2条1項1号)
(2)新2号営業(改正後風営法2条1項2号)
(3)特定遊興飲食店営業(改正後風営法2条11項)
(4)飲食店営業(改正後風営法2条13項4号)

(1)新1号営業(改正後風営法2条1項1号)

新1号営業は、改正前風営法の1号営業と2号営業が合わさった形態で、「接待+飲食or遊興」を行う営業です。

「接待」というのは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」で「営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して」「興趣を添える会話やサービス等を行うこと」とされています。イメージとして一番わかりやすいのは、キャバクラのように従業員がお客さんの横に座って談笑したりお酌をしたりするような場合でしょうか。

ライブハウスで、いわゆる「接待」が行われることはおよそ考えにくく、ライブハウス営業は、新1号営業にはあたらないと整理して良いと思います。

(2)新2号営業(改正後風営法2条1項2号)

新2号営業は、改正前風営法の5号営業がスライドしたものになります。今回の風営法改正により3号営業(ダンス+飲食)と4号営業(ダンスのみ)がなくなったため*1、従来の5号営業は、番号が繰り上がって新2号営業となったのです。新2号営業は、客室の照度を10ルクス以下とする飲食店(「低照度飲食店」といいます)を風俗営業と位置づけるものです。

低照度飲食店営業は、昭和34年(1959年)の風営法改正時に設けられた営業形態です。当時、カップルが喫茶店で抱き合うなどの性的行為を行う同伴喫茶という形態の店舗が出現し、そのような店舗では、店内の照明を暗くすることが往々にして行われていたため、低照度飲食店として風営法で規制するようになったといわれています。

条文上は、営業所内の*2照度を10ルクス以下で営む飲食店は、低照度飲食店に該当することになりますが、低照度飲食店の数(改正前風営法5号営業の許可を取得している店舗の数)は、平成22年には全国で7軒、平成23年から平成25年には全国で6軒、平成26年には全国で5軒となっています*3。なお、この数字は、改正前風営法6号営業すなわち区画席飲食店営業との合計数なので、低照度飲食店単体で数えるとさらに少ない数になる可能性があります。

低照度飲食店営業の基準となる10ルクスがどの程度の明るさかというと、「10ワットの電球から1メートルの距離における当該光の方向に直角に置かれた面の明るさとほぼ同じ」で、「普通の劇場や映画館の休憩時間中の明るさが大ざっぱにいってこれに当たる」*4とされています。

では、ライブハウスは、低照度飲食店営業にあたるのでしょうか。

ライブハウスは、当然のことながら、演出上の効果として、店舗内の照度が10ルクス以下となる場合もあります。単に営業所内の照度を10ルクス以下で営む飲食店が低照度飲食店にあたるのだと考えれば、ライブハウスが低照度飲食店にあたってくる可能性はあります。なお、このような解釈の可能性自体は、改正前風営法の頃からあったものなので、平成27年の風営法改正によって、新たに照度が問題とされることになったという言い方はあまり正確ではないと思います。

条文だけ見れば、低照度飲食店営業とは、「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの」をいいます。そうすると、営業所内の照度が10ルクス以下になる飲食店については、すべて低照度飲食店営業にあたるようにも思えます。

しかし、そのような整理は、風営法の規制の目的に照らして、妥当ではないと思います。

風営法はあくまで、第1条の目的*5の達成のために、営業の規制を行うものです。

形式的には低照度飲食店営業の条文上の要件があてはまる場合であったとしても、風営法の規制の目的がそもそも妥当しないような営業に対してまで、低照度飲食店営業にあたるとして、風営法の許可がなければ営業できないとすることは、営業の自由に対する過度な規制であるといわざるを得ないと考えます。

例えば、単にお店の雰囲気を良くするために間接照明などを使って落ち着いた照明を使っているようなカフェやバーまでもが、低照度飲食店営業として風営法の許可を取得しなければならないとしたら、皆さんはどうお考えになるでしょうか。

いかなる店舗を低照度飲食店営業と考えるかについては、昭和33年当時に「低照度飲食店営業」を風俗営業として規定するかどうかについてなされた国会での議論などが参考になるのですが、これについては、別の機会に改めて検討したいと思います。

ライブハウスについても、演出上の効果として照度が10ルクス以下になる場合がありますが、これをもって、単純に低照度飲食店営業にあたると考えるのは性急であると考えます。

特に、演出上の効果として10ルクス以下になる場合があるライブハウスやナイトクラブを単純に低照度飲食店営業にあてはめるのは問題であることについては、私たちがロビー活動で議連や警察庁などと対話していく中でも問題点として指摘し、照度の計測方法については実態に即した形で計測すべきであることを求めてきました。これについては、警察庁が集めた有識者会議である風俗行政研究会の「ダンスをさせる営業の規制の在り方等に関する報告書」(平成26年9月10日付)の中でも次のような指摘がなされています。

クラブにおいては照度が著しく変化することが一般的であることから、照度の測定方法については、営業の実態を見ながら、実質的なものとなるようにすべきであると考えられる。

このような経緯を経て、改正風営法に基づいて定められた風営法施行規則においては、低照度飲食店営業にあたるかどうかを判断するための照度の計測方法について、これまでとは違う取り扱いをしています。その取り扱い方は若干複雑なので、これについても別の機会に検討しましょう。

ライブハウスに関しては、そもそも風営法の目的に照らして低照度飲食店営業にあたらないと考えられるうえに、演出上の効果として10ルクス以下となる場合を考慮した照度の計測方法が定められていることから、新2号営業にあたる可能性は低いのではないかと考えています。

(3)特定遊興飲食店営業(改正後風営法2条11項)

特定遊興飲食店営業は、今回の改正風営法で認められた新たな営業形態です。この特定遊興飲食店営業は、①深夜(午前0時から午前6時まで)に、②酒類を提供して、③客に遊興をさせる、営業形態です。この点、ライブハウスについては、ドリンクとして酒類が提供されることはありますし、客にライブを観せることは「遊興」にあたるとされているので、②と③は満たすと考えられます。

もっとも、ライブハウスは、たいてい19時くらいからライブを開始し、遅くとも23時くらいには全ての演目が終了し、0時までには営業を終了するところがほとんどではないでしょうか。そうすると、①の深夜に営業するという部分はあてはまらない店舗が多いと思います。このため、多くのライブハウスは、特定遊興飲食店営業には該当しないことになります。

もちろん、数は少ないですが、①深夜にも営業するライブハウスもあります。深夜営業を行うライブハウスについては、特定遊興飲食店営業に該当する場合が多くなると思います。

(4)飲食店営業(改正後風営法2条13項4号)

前述したように、深夜営業を行わない多くのライブハウスは、風俗営業や特定遊興飲食店営業にはあたらず、単に飲食店営業にあたるということになります。

すなわち、改正前風営法においては、ライブハウスもダンスの解釈によっては3号営業として風俗営業に該当する可能性がありましたが、改正後風営法においては、深夜営業を行わないのであれば、特に風営法の許可の取得を必要としない飲食店営業として整理されるということになります。

深夜営業を行わない多くのライブハウスについては、今回の風営法改正によって、3号営業にあたるという可能性がなくなったという意味では、不安定な地位から解放されたと評価して良いのではないでしょうか。

まとめ

以上見てきたとおり、深夜営業を行わない多くのライブハウスは、(4)飲食店営業に整理されることになります。このため、風営法改正によってライブハウスが風俗営業になるというのは誤りであるといえると思います。

もっとも、照度の計測方法などによって(2)新2号営業と整理される可能性もありますし、深夜営業を行う場合には(3)特定遊興飲食店営業に該当する場合もありますので、その点については注意が必要です。

*1:改正後風営法では、「ダンス」を切り口とする営業規制を撤廃したため、従来の3号営業と4号営業はなくなりました

*2:なお、改正風営法では「客席における」照度から「営業所内の」照度に変更になっています

*3:平成27年度版『警察白書』のデータ

*4:飛田清弘・柏原伸行『条解風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律』79頁

*5:風営法1条は「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする」と定めています。

風営法改正によってライブハウスが風俗営業になるというのは本当か?(1)

風営法改正

自己紹介

細々と個人ブログを続けてきた私ですが、このたびハフィントンポストにもブログを掲載していただけることになりました。初めてご覧いただく方もいらっしゃると思いますので、簡単に自己紹介を。

私は、弁護士として、アート・エンターテインメント法務、不動産法務、医療法務の3つを業務の柱とした弁護士法人を運営すると共に、文化・芸術を支援するNPO「Arts and Law」の理事、DJ/アーティストで構成される「クラブとクラブカルチャーを守る会」(略称CCCC)の事務局長を務めております。

また、ロックバンド「THE BUFFETTMENT GROUP」(略称BMGR)でベースを担当し、今年6月に7インチのアナログレコードを発売しました(置いてくださるお店を絶賛募集中です!)。

いろいろなジャンルの音楽に興味があり、好きな音楽の話をし始めると、本題に入ることができなくなってしまいますので、自分がクラブミュージックも聴くようになったきっかけだけ触れておきます。

96年から97年にAphex TwinSquarepusherPizzicato Fiveのアルバムからドラムンベースの魅力にはまった(特に大好きなのは4heroです)のを皮切りにクラブミュージックを聴くようになっていきました。

自己紹介はこれくらいにして、本題に入りましょう。

改正風営法の施行

昨年6月に成立した改正風営法が、いよいよ今年6月23日に施行されます。これを受けて、インターネット上に様々な情報が流れ、混乱されていらっしゃる方もかなりおられるのではないでしょうか。

ナイトクラブやライブハウスの中でも、今回新設される特定遊興飲食店営業の許可取得に向けて動いている店舗もある一方で、そもそも許可を取得する必要があるのかどうかという点も含めて、よくわからないし、戸惑っていらっしゃる事業者の方も多いと思います。

また、ナイトクラブやライブハウスのユーザーの皆さんの中にも改正風営法でどうなるのかについて、疑問を持たれている方もいらっしゃるのではないかと思います。

私は、今回の改正風営法のロビー活動に関わりを持った者の一人として、できる限り、正確かつ冷静な情報提供を行っていきたいと考えております(これまでも、私の個人ブログで改正風営法の経緯等について綴って参りましたが、特に多くの方の目に止まるブログでもありませんでしたし、流動的な状況の中で記載したものも多々あるので、今後、適宜記事のアップデートをしていきたいと考えています)。

そもそもライブハウスは、改正前風営法の3号営業にあたるのか。

現在、ネット上で見られる言説のひとつに、「今回の風営法改正により、これまで風俗営業ではなかったライブハウスが風俗営業の許可取得の対象になった。ライブハウスは風営法改正でとばっちりを受けた」、といったものがあります。

果たして、この言説は正しいのでしょうか。

上記の言説には誤解を招く部分があり、正しいとはいえないと私は考えています。このまま流布されるのを放置しておくのはたいへん危険であるとも感じています。

そこで、上記の言説がなぜ正しいといえないのかについて、これから何回かにわけて検証していきたいと思います。

改正前風営法(本エントリーでは平成28年6月23日に施行される改正風営法と対比して、この施行前の風営法を「改正前風営法」と呼ぶことにします)では、ナイトクラブのような「設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、飲食をさせる営業」(改正前風営法2条1項3号)(「3号営業」と呼ばれています)を風俗営業として規制してきました。

まず、ライブハウスでは、通常、お客さんが店舗内で購入したドリンクを飲むので、「飲食をさせる営業」にあたることになると思います。

では、ライブハウスは「設備を設けて客にダンスをさせ」る営業といえるのでしょうか。

これについては、改正前風営法を読んでも、よくわからなかったのです。なぜ、よくわからないのかというと、風営法に「ダンス」の定義が書かれていないからです。

ダンス」といわれた場合に、どういったものをイメージするのかは、人によってそれぞれ違うと思います。社交ダンスを思い浮かべる方、ヒップホップダンスを思い浮かべる方、オタ芸を思い浮かべる方、阿波踊りを思い浮かべる方、などなど。

人によって解釈にかなりの幅がある「ダンス」について、改正前風営法には定義がおかれていなかったのです。この点は、風営法によるダンス営業規制の大きな問題点のひとつでもありました。

  • バンドの演奏を聴いて、客が音楽に合わせて体でリズムをとっていた場合、風俗営業の「ダンス」にあたるのでしょうか。
  • エレクトリックミュージックのライブパフォーマンスに合わせて客が体でリズムをとっていた場合、風俗営業の「ダンス」にあたるのでしょうか。
  • ライブハウスでもDJブースが用意され、DJがパフォーマンスすることもありますが、これに合わせて客がリズムをとっていた場合、風俗営業の「ダンス」にあたるのでしょうか。
  • アイドルがライブハウスでパフォーマンスを行い、これに合わせて客がオタ芸を披露していた場合、風俗営業の「ダンス」にあたるのでしょうか。

これらについて、一体、どう考えればいいのか。

これが改正前風営法の条文を読んでもよくわかりませんし、警察サイドが作成している改正前風営法の解釈運用基準を読んでもよくわからなかったのです。

このため、ライブハウス営業が3号営業にあたるのかという質問に対しては、端的に言うと、「よくわからない」と答えるしかありませんでした。

この「よくわからない」というのは、実は、たいへん怖いことです。なぜなら、ライブハウスが3号営業にあたる可能性もあるという意味を含んでいるからです。

実際に、大阪のナイトクラブNOONが風営法違反として摘発されたとき、NOONではDJが選曲した英国のロックミュージックを流す「ブリティッシュパビリオン」というイベントが行われていました。

警察が店内に踏み込んだとき、ロックミュージックに合わせて20名程度のお客さんが音楽に合わせて体を揺らせたり、左右にリズムをとったりしていたという状況でした。そのような状況の中、NOONの元経営者である金光正年さんは警察に身柄拘束され、その後、起訴され、いわゆるNOON裁判と呼ばれる長い裁判闘争に巻き込まれることになるのです。

ここで、NOON裁判の第一審判決が認定している当日の店舗内の状況について、判決文から引用してみたいと思います。

【ウ】 フロアでは,男女双方を含む約20人程度の客が立ったまま音楽に合わせて体を動かすなどしていた。具体的には,その場でジャンプしたり,音楽のリズムに合わせて左右にステップを踏んだり,ステップに合わせて手を左右に動かしたり,頭をうなずくように上下に動かしたり,膝を上下に曲げ伸ばししたり,左右の足を踏みかえたり,両足のかかとを上げ下げしたりするなどしていた。

中には,ボックスステップを踏み,地面に手をつけた体勢から足を出したり,腰をひねったりして踊る者もいた。もっとも,客同士で体を触れ合わせるようなダンスをしている者はいなかった。

【エ】 フロアにいた客は,ステージ側よりもDJブース側により多く集まっており,客同士の距離は,近いところでは約30cm程度であったが,客同士の体が接触しているような状態にはなかった。

【オ】 フロアにいた客は,上記ウのとおり音楽に合わせて体を動かすなどしていたほか,椅子に座って音楽を聞いている者もいた。また,バーカウンター等のフロア以外の場所に設置してある椅子に座っている客もいた。

 

「その場でジャンプしたり,音楽のリズムに合わせて左右にステップを踏んだり,ステップに合わせて手を左右に動かしたり,頭をうなずくように上下に動かしたり,膝を上下に曲げ伸ばししたり,左右の足を踏みかえたり,両足のかかとを上げ下げしたりするなどしていた。」

文章にすると、なんだか不思議な感じですけど、この記述のようなお客さんの動きというのは、ライブハウスでも良く観られる光景なのではないでしょうか。

結果的に、NOON裁判では、お客さんが上記のような動きをしていたことに関して、3号営業の「ダンス」にはあたらないとして、金光さんを無罪とする判決が出されました。その後も、控訴審、上告審でも無罪判決が出て、先日、金光さんの無罪判決が確定することになりました。

しかし、この結論が出るまでに、4年もの月日が流れることになりました。

ここでポイントとなるのが、上記のようなお客さんの動きが「ダンス」であるかどうかについて、金光さんは、法廷で争わなければならなかったということです。すなわち、警察や検察は、上記のようなお客さんの動きが風営法上の「ダンス」にあたると考えて、現実に、金光さんの身柄を拘束し、起訴し、最高裁まで裁判で争ったということなのです。

このことからすれば、改正前風営法のもとでは、ライブハウスも、いつ3号営業の「ダンス」をさせていると、警察サイドに判断されるかわからない状況でした。そして、ライブハウス営業は、3号営業の許可をとっていなかった場合に、風営法違反で摘発される潜在的な危険をはらんでいたということになります。

私は、ライブハウスにお世話になっているバンドマン、音楽ファンの一人として、ライブハウスが上記のような潜在的危険にさらされていることが、非常に嫌でしたし、なんとかしてこの危険をなくすことができないかと考えていました。このことも、私を風営法改正のロビー活動に向かわせた大きなきっかけのひとつです。

今回のエントリーについて整理すると、ライブハウスも、改正前風営法の3号営業として風俗営業にあたる可能性があり、3号営業の許可をとらずにライブハウス営業を行うことは風営法違反として摘発されるを危険性を有していたということになります。

この時点で、「今回の風営法改正により、これまで風俗営業ではなかったライブハウスが風俗営業の許可取得の対象になった。ライブハウスは風営法改正でとばっちりを受けた」という言説に誤解を招く部分があるということがわかると思います。

では、改正風営法では、ライブハウス営業はどういった位置づけになるのでしょうか。

これについては、次回エントリーにて触れてみたいと思います。

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂

経済産業省が、今年も「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」について改訂を行った旨を発表しました。この準則は、平成14年3月の策定以降、定期的に改訂されています。

経済産業省は、この準則によって、インターネットショッピング等の電子商取引や、ソフトウェアやデジタルコンテンツ等の情報財取引に関する様々な法的問題点について、関係法令がどのように適用されるのかを明らかして、電子商取引、情報財取引における予見可能性を高めることを目的にしています。

今回の改訂の主な点は以下のとおり。

○一部改訂
・ワンクリック請求と契約の履行義務
・未成年者による意思表示
・インターネットショッピングモール運営者の責任
・ユーザー間取引(インターネット・オークション、フリマサービス等)
・インターネット上で行われる懸賞企画の取扱い
共同購入クーポンをめぐる法律問題について
ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任
景品表示法による規制
・インターネット上の著作物の利用
・サムネイル画像と著作権
・データ集合の利用行為に関する法的取扱い
・国境を越えた取引等に関する論点(国際裁判管轄及び適用される法規に関して)

○新規論点の追加
・データ消失時の顧客に対する法的責任

 

電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の本文PDFは、こちらからどうぞ。

【2016年3月版】2016年6月の改正風営法施行までの流れ

風営法改正

【この記事のポイント】

(1)2015年6月17日に改正風営法が成立し、同月24日に公布された。

(2)改正風営法の施行は、2016年6月23日から。

(3)改正風営法により新設される特定遊興飲食店営業の許可申請受付開始は、2016年3月23日から。

改正風営法が2015年6月17日に成立、同月24日に公布、施行は2016年6月23日。

久々の更新になりました。

本ブログのアクセス解析を見ますと、「2016年6月の改正風営法施行までの流れ」というエントリーを一番ご覧いただいているようです。

ところが、同エントリーは2015年8月27日に書かれたもので、現在(2016年3月)では古い内容となってしまっています。

このため、同エントリーのアップデート版として、本エントリーを書きたいと思います。

2015年6月17日に改正風営法が成立し、同月24日には同法が公布されました。
同法の施行*1は、2016年6月23日からです。

改正風営法のうち、ダンス教室、ダンスホールなど「設備を設けて客にダンスをさせる営業」(現行風営法2条1項4号)(いわゆる4号営業)に対する規制については、6月24日の公布と同時に施行されました。このため、ダンス教室、ダンスホールなどに対する風営法の規制は、すでに撤廃されています。

社交ダンス業界の皆さんは、クラブに対する風営法の規制が問題視される以前から、風営法の規制を疑問視し、改正に向けて動いていました。今回の風営法改正も、社交ダンスの業界の皆さんの尽力あってこそ、実現できたものといえるでしょう。

一方、クラブなどに対する規制である「設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」(現行風営法2条1項3号)(いわゆる3号営業)については、2016年6月23日の改正風営法施行までは、現行法の規制が残ったままとなります。

 では、なぜ改正風営法のうち4号営業に関する部分については、改正風営法の公布と同時に施行され、3号営業に関する部分については公布から1年後の2016年6月23日の施行となるのでしょうか。

それは、4号営業に関しては、風営法による規制が完全になくなるだけで、新たな規制が設けられるわけではないため、公布と同時に施行することが可能であるのに対し、3号営業に関しては、規制がなくなると共に、特定遊興飲食店営業という新たな営業形態に関する規定が設けられるため、政令などで具体的な許可取得の要件などを定める必要があるからです。

 以前のエントリーでもお伝えしたように、クラブや踊れるレストランのような「飲食+ダンス」という営業形態は、風俗営業として規制されてきましたが、今回の改正により、風俗営業からは外れます。

また、日本では、「飲食+ダンス」という営業形態が風俗営業とされ深夜営業が禁止されていたのと同時に、深夜に営業する飲食店で、客に遊興*2させることは禁じられています。このため、日本では、深夜に、客に飲食をさせつつ、客に遊興させるという営業形態は許されていませんでした。ところが、今回の改正風営法で新設される「特定遊興飲食店営業」という新たな営業形態により、飲食店でお酒を提供しつつ深夜に客に遊興させることが可能となりました。*3

 「特定遊興飲食店営業」の許可取得要件は、風営法の中だけで決められるわけではなく、政令、国家公安委員会規則、各都道府県の条例、各都道府県の公安委員会規則、風営法の解釈運用基準などで具体的に定められていくことになります。

2016年3月23日から「特定遊興飲食店営業」の許可申請の事前受付が開始されるため、本年に入ってから急ピッチで各都道府県の条例などの整備が行われています。東京都を例にとると2016年3月3日に条例*4が議会で可決されました。

2016年6月の施行までの流れ

それでは、昨年の改正風営法成立から、施行までの流れを時系列でざっと書いておきます。

2015年5月29日 改正風営法衆議院で可決
2015年6月17日 参議院でも可決→改正風営法成立
2015年6月24日 改正風営法公布(4号営業の規制削除に関連するものは即日施行)
2015年11月13日 政令などが公布*5
2016年2月1日 風営法解釈運用基準について通達*6
2016年3月 各都道府県にて条例などが制定
2016年3月23日 特定遊興飲食店営業事前申請開始予定
2016年6月23日 改正風営法施行予定

本エントリーを書いているのは2016年3月5日ですが、そろそろ多くの都道府県で条例などが公布されることになり、具体的にどこで特定遊興飲食店営業を行うことができるのかなどがはっきりしてくると思います。

個人的な見解では、特定遊興飲食店営業の営業所設置許容地域の指定がかなり狭まってしまっているように感じていますので、今後、どのように見直していくのが妥当なのかについて、引き続き検討していきたいと考えています。

また、私が東京在住なこともあり、どうしても東京都の情報中心での情報発信になってしまっていますが、各地の状況などについても知りたいと思いますし、ここがどうなっているのか知りたいというご要望があれば調査も行っていきたいと思っております。

引き続き、宜しくお願い申し上げます。

*1:施行とは実際に法令の効力を発生させることをいいます。

*2:ダンスもこれに含まれます

*3:「特定遊興飲食店営業」は、風営法の中で定められてはいますが、風俗営業ではなく、別の営業形態と位置付けられています。

*4:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の一部を改正する条例

*5:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成27年政令第381号)、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成27年政令第382号)、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(平成27年内閣府令第65号)、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係国家公安委員会規則の整備に関する規則(平成27年国家公安委員会規則第20号)

*6:警察庁丁保発第10号、丙保発第3号等

【お知らせ】「ミュージシャンによるミュージシャンのためのお金のセミナーVol.2」@新代田FEVER

著作権法 契約

「ミュージシャンによるミュージシャンのためのお金のセミナーVol.2」

2016年2月15日(月)に新代田FEVERにて開催される「ミュージシャンによるミュージシャンのためのお金のセミナーVol.2」に登壇します。

新代田FEVERといえば、私の大好きなライブハウスの1つ。FEVER開催の名物イベントのひとつである「comrade」のVol.1(AS MEIAS、ATATA、akutagawafolioが出演)、Zの歩さん脱退時のライブ(ただでさえ泣けたのに、まさかの森さん参加によるゼアイズ曲の演奏でさらに涙)、Åのレコ発(hununhumも出演していて私的にはホクホク)、とんちまつり東京編(東京・武蔵野が誇る音楽集団とんちれこーど主催のイベント。今考えるとceroあだちセクステットはすごい分岐点となるライブだったのでは?)などなど、数々の思い出に残るライブが開催された場所です。

ここ最近だと、Crypt City、BALLOONS、slavedriverも出演したTHE LIFE AND TIMESのジャパンツアー、LITEとAnd So I Watch You From Afarのツーマン、skillkillsのワンマンなど素晴らしいライブを体験できました。

そんなFEVERで開催されるセミナーに登壇できるというのは、たいへん光栄です。すごく広いらしいとの噂の楽屋にも入れるかもしれないと思うと感激もひとしおです(自分のバンドでも出演できたらいいんですけど!)。

主催はLITEの武田信幸さん

さてさて、今回のセミナーの主催は、LITEのギタリストであり、かつ、行政書士としても活躍する武田信幸さん。

LITEとして精力的に活動されている(3月にはThe Dylan Groupのジャパンツアーにも参加されるとのこと!)のはご存知のとおりですが、近年は行政書士としても活動されており、ミュージシャン、バンドマンが活動を続けていくための資金調達などについてより良い仕組みを作っていけるように日々取り組みをされています。

また、税理士の宮原裕一さんも小学校での税金の授業や弥生会計のTipsを解説したHP「弥生マイスター」を始め、お金に対する考え方を多くの人に共有してもらうために積極的に活動を続けられております。

昨年の第1回は、武田さんと宮原さんのお二人が講師として登壇され、好評を博したイベントだったのですが、その第2回に、私も参加させていただくことになりました。

私もバンドをずっと続けているのですが(今年は7インチを出します!)、バンドを継続することがたいへんなことは身をもって実感しています。経済的な事情で活動を停止してしまうバンドも数多くあります。そんな状況の中で、どうやったら、多くの人がバンドを続けていける環境を作るお手伝いができるのかを考え、模索していくことを、自分の弁護士としてのライフワークの1つと考えています(自分の中では、Arts and Lawでの活動や、風営法のロビー活動などもそのライフワークの一環として位置付けています)。

今回はミュージシャン、バンドマンに向けたセミナーということもあり、私の方では著作権に関しての基礎と、音楽周りによく出てくる契約について、ポイントを絞ってお話できればと考えております。

ライブハウスで行われるセミナーなので、リラックスした雰囲気でお話ができたらいいなと思っております。書籍やブログなどでは書きにくい話題も出てくると思いますので、ご都合つく方は是非ご参加ください。

参加方法については下記か、FEVERのホームページセミナーのFacebookページをご覧ください。

OPEN 18:30 / START 19:00
ADV ¥500 (+1drink) ※1dirink ¥600
セミナー、懇親会費込。※セミナー終了後、その場で懇親会有り。
FEVERにてメール予約受付中 ticket0215@fever-popo.com
上記のアドレスにお名前(フルネーム)、ご希望枚数をご記入の上お送り下さい。
※こちらのメール予約に整理番号はございません。
※当日はFEVER受付にて予約の引き換えを致します。
※自動返信が届かない場合は携帯の設定でPCからのメール受信を有効にするか、または他のメールアドレスから再送してみて下さい。

藤森へのご質問がある方は下記のフォームまで

あと、もし、こういう話が聞きたいとか、私へのご質問がある方は、下記のフォームから質問をお寄せください。できるかぎりお答えできるようにしたいと思っております。

 

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では、2月15日(月)、新代田FEVERにてお待ちしております。

懇親会の二次会は「えるえふる」に行きましょう。

よろしくお願いいたします!